上品山が朝日にかすみ、鳥のさえずりとともに、北上川の川面には、暖かな日差しがキラキラと輝く季節となりました。校舎の中庭がすこしづつ緑色に変わりはじめ、校木のユリノキの芽は日に日に大きく膨らんでいます。いよいよ春がこの石巻西高等学校に訪れようとしています。
ここに東松島市長 渥美巌様 PTA会長 三浦まゆみ様をはじめ、多くのご来賓の皆様にご臨席賜り、宮城県石巻西高等 学校 第38回卒業式を挙行できることを、たいへん喜ばしく思います。
そして、創立40周年という節目の年に3学年として過ごした皆さん、ご卒業おめでとうございます。
振り返ってみると今年の3年生は多くの輝かしい実績を残しました。部活動では、団体戦で女子弓道部が、東日本大会に、個人戦では、陸上競技部と水泳競技が、東北大会に出場しました。また、個人としての活動ですが、ダンス、アイスホッケー、珠算において全国大会に出場、入賞しております。
石巻地区では多くの部活動が優勝しました。女子弓道部 女子ソフトテニス部 男子ソフトテニス部 女子バレーボール部 男子バレーボール部の皆さん、石巻を制覇した気分はいかがですか。
そして、硬式野球部 男子卓球部は、地区大会を勝ち抜き県大会に出場しました。その宮城県大会では団体戦で女子卓球部と女子ソフトテニス部がベスト16まで勝ち上がりました。
また、文化部では吹奏楽部が地区コンクールで入賞し、県吹奏楽コンクールに出場しました。総合文化部美術班では県美術展で奨励賞を頂きました。また多くの文化部の皆さんは、西翔祭での発表、そして遊楽館で開催された宮城県総合文化祭で活躍しました。
そして、学業面でもそれぞれが目標を見据えていました。公務員や民間企業、大学や専門学校に進むみなさん、よく頑張りました。そして近年稀にみる人数が国公立大学の吉報を待っています。もちろん、捲土重来を目指して来年も頑張ろうとしている皆さんは、人生の正しい決断だと思います。
さて、高校での勉強や部活動を経験して「努力が報われる。」という言葉をどう思いますか。もしネガティブな印象があれば聴いて下さい。実は、この言葉には主語が抜けています。正しいのは、「目的が明確な努力は報われる。」ということです。卒業後にも努力する場面は多いと思いますが、「目的が明確」かどうかが、結果を左右します。そしてもし、失敗したとしても、なぜ失敗したかを考えることが「目的を明確」にします。そして、次を目指せば良いのです。
それから、今年は生徒会を中心に「自由と創造」というスローガンのもと、3年生が様々な行事を運営してきました。中学生を対象としたオープンキャンパスでは各教室で生徒自らが説明しました。きっと今年の高校入試の高い倍率は君達のおかげです。
運動会と球技大会では3年生が企画運営を取り仕切り、新たな競技種目を導入し、自ら選手としても活躍していました。また、西翔祭でも、展示や出店を大幅に増やして、全ての教室と中庭や渡り廊下まで埋めました。講堂でのステージ発表も3年生が大いに盛り上げてくれました。おそらく、集団の前に立ったり、放送で指示
したりする時には緊張したことでしょう。それぞれの責任者はプレッシャーに押しつぶされそうになったのではないかと思います。
実は、教育として「組織を動かすことに挑戦させる」のが大切だと考えています。
組織論では「イノベーションは挑戦することで始まる。」といわれます。「心理的安全性の高い組織からしか、イノベーションは生まれない。」ともいいます。将来、日本の社会を支えていくことになる皆さんにとって、高校時代の貴重な「良い経験」になったと思います。
ここで、皆さんの故郷である石巻・東松島の、そして日本の素晴らしさについて話したいと思います。
イギリスが東インド会社をつくり「紅茶」の貿易をしていたことを習いましたね。そして、当時植民地のアメリカに高く「紅茶」を売りつけようとしたことが、アメリカ独立戦争の引き金となりました。その後のアヘン戦争も、イギリスがアヘンと引き換えに「紅茶」を手に入れようとしたのです。さて、「紅茶」がそれほどまで必要とされていた理由は何なのか分かりますか?
その理由は飲み水にあります。
例えば19世紀のイギリスではテムズ川の水をそのまま水道に使っており汚れていました。臭くてとても飲めません。コレラという恐ろしい病気も頻繁に発生していました。喉が渇いた時には湧かして殺菌して紅茶で臭いを消すことで、やっと飲めたのです。日本ではお茶にしなくてもそのまま水道水を飲むことができますが、現代でも世界中のほとんどの国では飲めません。だから紅茶が大切なのです。
それから水は貴重なのでシャワーだけという国がほとんどです。毎日、湯船にお湯を張って入る習慣のある国は日本だけです。実は日本は地球上でも稀にみる水資源の豊富な国なのです。今、異常気象が世界各地で起こっています。近い未来には、日本の水資源に注目が集まる時代が来るでしょう。
次に水が流れる川について質問します。日本中にある都会、東京、大阪、名古屋などの古くから栄えた町は全て大きな川の河口にあるのはなぜだか知っていますか?石巻もそうですね。なぜ、河口付近の町が栄えるのですか。
実は、江戸時代までずっと「物資の輸送」は道路ではなく川でした。当時はトンネルを掘る技術もなく、アップダウンのある道しかできませんでした。牛や馬に引かせる荷物の量はとても少なく、坂を登るのも大変でした。
当たり前ですが川は平坦です。天気の良い日は川船で大量に物資の輸送ができました。
実は川は現代の高速道路のような、重要な輸送路だったのです。だから川の近くに町ができました。登米、飯野川、豊里、桃生、和渕、鹿又、石巻と北上川沿いに町がありますね。
その視点で宮城県の地図を見ると驚くことがあります。さて、質問です。「北上運河」はどこにあるか知っていますか?
「北上運河」は北上川から石巻工業高校の横を45号線にそって流れています。松並木もありますね。門脇、大曲を経て鳴瀬川の河口まで繋がっています。鳴瀬川の先は、野蒜の貞山運河を経て松島湾へ、七ヶ浜、荒浜を経て阿武隈川の河口までずっと続いています。つまり、北は盛岡から花巻、一関、石巻、矢本を経て仙台まで、南は白河から、二本松、岩沼、閖上を経て仙台まで繋がっており、全ての物資を川船で仙台の青葉城まで運ぶことができたのです。
その流域面積を合計すると17,609km2となり、江戸の交通網であった利根川水系の16,840km2を上回ります。このように運河で川をつないでいた場所は、他には無く、日本の中でも伊達藩、宮城県以外にはありません。
さらに、牡鹿半島金華山沖は世界三大漁場の一つです。日本の中でこんなに魚が獲れる所も他にはありません。
ですから宮城県そして石巻は日本の中で、人間が生活するにはとても快適で、食糧の豊富な地域なのです。今、ニュースでは令和の米騒動という米不足が問題となっています。円安になり日本のコメが海外に輸出される時代となり、これからさらに、水を大量に必要とする、水田のコメが注目されることになるでしょう。
この地に生まれた皆さんは「水」に恵まれた東松島、石巻、女川、登米、涌谷を誇りにしてください。皆さんにとって日本一の故郷です。
卒業後、地元を支える人もいます。そして、地元を離れる人もいます。故郷は幾つになっても一番安心できる場所です。いつでも戻ってきて地元を支えてください。
それから、これまで3年間、西高で一緒に過ごしてきた仲間を、これからは違う道に進んだとしても大切にしてください。高校時代の友人はおそらく一生の友になります。また、卒業まで、学校と日々の生活を支えてくれたご家族の方々に感謝してください。
そして、保護者の皆様にお伝えしたいことがあります。
子どもたちは西高の3年間で人間的に大きく成長しました。西高の教師は本気で生徒達を伸ばそうとしていました。生徒達もその気持ちに応えて育っていきました。我々教師が思うよりも、大きく自分で、伸びていったように思います。
その生徒達を、私は石巻西高の校長として誇りに思います。西高生らしい人を思いやることができる心の優しい生徒達、平凡の中に非凡を感じる生徒達でした。
そしてもうすぐ、東日本大震災から14年となります。今18歳の子どもたちは当時4歳、先が見えない不安の中、小さな子供を育てるのはたいへんなご苦労があったことと思います。そして思春期を迎え、親子の気持ちのすれ違いなどで、ぶつかることも、あったかもしれません。
そして今日、高等学校を卒業する時を迎えました。これまで育ててきた保護者の皆様、本当にお疲れ様でした。そして、ご子息ご息女のご卒業おめでとうございます。
最後に、この会場にいる、この地域の未来に関わる、全ての皆様のご健勝を祈願し、式辞といたします。
令和7年3月1日
宮城県石巻西高等学校 校長 若林春日
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